インフラサポート協同組合

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事例紹介2021.02.05

ベトナム人を採用してきた経験の蓄積

リアル建設株式会社 専務取締役 川端様

道路の施工や補修、水道やガス、電気、下水の埋設管の敷設など、ライフラインに関わる土木事業を手がけるリアル建設株式会社では、7年前からベトナムの技能実習生の採用を始めています。採用の経緯や技能実習生の実態、受入れに対する考え方、それらを支えるインフラサポート協同組合のサポートについて、同社の専務取締役 川端様に聞きました。

ベトナム訪問

彼らを採用するに至った経緯からお話いただけますか。

建設業界における外国人技能実習生の採用は1990年代から始まっていますが、弊社はどちらかといえば遅いほうかもしれません。2014年から採用し、今年で7年目になります。

検討を始めたのは2012年頃でした。当時から技能実習生の受け入れを行う監理団体を通じた打診はありましたが、たまたまベトナム進出した企業に勤めた経験のある社員がいて、「ベトナムはいいですよ」という話を聞きました。

採用する前に不安はありませんでしたか。

私もそうですが、社長が旅行好きで、東南アジアによく行っていたので、それほど不安はありませんでした。でも、まさか本当に彼らを採用するとは思っていませんでした。

面接時の彼らの印象はどうでしたか。

社員がベトナムを訪問し、応募者と面接しましたが、「印象は良かった」と報告を受けました。1期生は6人を採用。その3倍の人間を面接して選びました。人柄や日本語の能力などで判断したものの、最初は手探りで、正直よくわかりませんでした。

2期目から私がベトナムに面接に行きました。家族持ちを選びました。仕送りしなければならないから、一生懸命働いてくれるだろうとの思いからです。ベトナムは今、開発ラッシュですから、建設業の経験があることも重視しました。しかし、3期生は若い子を選びました。若いと、日本語を覚えるスピードが早いからです。でも結局、どちらがいいか答えは出ていません。

いまでは日本にいても、リモートで面接状況を見ることができるので、採用に活かしています。現地の研修センターで採用者たちの実習状況を見ることもできます。ただフェイストゥフェイスで話さないと人柄はよくわからないものですね。

実習内容について

現在、技能実習生はどのような実習をしているのですか。

いわゆる道路工事の作業員です。実習制度の対象職種でいうと「建設機械施工」になります。

来たばかりの子は日本語がわからないので、すぐに現場で使えず、日本人社員からの苦情もありました。でも、3ヵ月もすると、彼らもだんだん言葉がわかるようになって、半年もすると気にならなくなりました。時間が経てば解決するものです。

もう少し詳しく技能実習生のことを教えてください。

1期生が来日してもうすぐ7年になります。弊社には現在、6期生までいて、37名のベトナム人がいます。世代的には20代~40代前半まで。ベトナムは南北に長い国ですから、日本と同じように、地域によって考え方が違います。北は少し硬くて、南は楽天的なところがある。色々で面白いですよ。

他の職種に比べ、建設業は厳しいというイメージもあるようで、応募する人間は限られます。我々も面接して人材を選びますが、彼らも会社を選んでいる。日本の同業他社とどう差別化するかを考えていかなければなりません。

待遇や給与、さらに彼らのモチベーションアップのためにどんな取り組みをされていますか。

社員として扱っているので、年金も健康保険も入っていますし、基本的に給与は日本人とベトナム人で違いはありません。

弊社に配属後1年半くらい経つと有給休暇をつかってベトナムに一時帰国できます。飛行機代は会社持ちです。そこまでやっている企業さんは少ないのでは。ある意味、日本人より手厚いかもしれません。

生活面でのケアはどうですか。

彼らは弊社が借り上げたマンション住まいで、3DKに3人が住んでいます。お金がかかるので、外食はしない。最初の頃は、部屋で騒ぐので苦情もありましたが、最近は先輩が日本のルールを教えてくれるので、そういう騒ぎはなくなりました。ベトナム人はサッカー好きで、よく河川敷でボールを蹴って遊んでいます。

会社主催の食事会もやりますよ。やはりコミュニケーションは大事です。それがきっかけで、仲良くなった日本人とベトナム人が5~6人で自然に食事に行くようになりました。週末に日本人がベトナム人を連れて一緒に釣りに行ったりね。

受入れて終わり、仕事が済んだらお疲れさまではなく、彼らの懐に入っていくことは大事です。そうすることで、心が通い合うのではないか。もっとも、そういう日本人がいるのと同時に、厳しい人間も必要です。これは日本人相手でも同じではないでしょうか。

社内の活性化

彼らを採用したことで職場に変化はありましたか。

彼らは前向きで、率先して物事に取り組みます。同じ年に入社しても、日本人より覚えが早いこともあります。日本人もやる気を出さないといけない。職場は活性化されていると信じています。会社として、不可欠な存在になっているんです。

技能実習生の受入れに対する考え方をあらためてお話いただけますか。

建設業界は古いので、昔ながらの考え方に囚われ、外国人を採用することに二の足を踏む企業も多いかもしれませんが、弊社はそうではありません。

確かに、技能実習生の採用には、給与とは別に諸々とお金がかかります。日本側の監理団体(組合)やベトナムの送出し機関への手数料は毎月1人あたり4~5万円かかります。色々教えても、技能実習生は3年後には母国に帰国してしまいます。しかし、建設業は人がいないと成り立たない業種です。

弊社は、日本人もベトナム人も関係なく同じ待遇(給与)です。受け入れた技能実習生には、日本に対して良い印象をもってもらいたい。彼らからそうした評価が得られれば、いったん母国に帰ってしまったとしても、また日本に来て働きたいと思ってもらえるのではないでしょうか。弊社では1期生の6名中、5名残っています。1名はコロナで一時帰国しましたが、弊社に戻ってくる予定です。

ベトナム人を採用してきた経験の蓄積

インフラサポート協同組合と他の監理団体との違いについてお話いただけますか。

多くの監理団体が様々な職種の人材を企業に送り出していますが、インフラサポート協同組合はその多くを建設業に送り出してきた実績があります。建設業に適した人材へのフォローアップがあります。

組合はベトナムにおいて、土木技術研修プログラムを展開しています。これが大きい。技能実習生は基本3年間という縛りで来日しますが、ゼロベースで仕事を始めるとしたら、一線で活躍できるまでにどれだけの時間がかかるのか。企業としては、3年間フルで実習してもらいたいので、ベトナムで事前にある程度の技術を習得し、建設用語も含めた日本語も勉強していれば、本当に助かります。

またベトナム人の専属通訳がいるので、技能実習生たちへの生活上のケアやアドバイスもしてもらえます。例えば、技能実習生が病気になったとき、対応もしてもらえます。これほど行き届いたサポートは他にはないのではないでしょうか。

技能実習生採用の今後についてどうお考えですか。

外国人技能実習生は、中国人からベトナム人へ移りました。中国経済が発展したので、日本で実習したいという中国人が減ったからです。今後、ベトナムでもこれと同じことが起きます。

では、次の国は…。インドネシアやミャンマーなどでしょうが、現状まだ具体的には決めていません。でも、視野には入れています。弊社にはこれまでベトナム人を採用してきた経験の蓄積があるので、そのときが来たら、うまく対応していけると思っています。

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