事例紹介2021.02.03
採用に至る経緯と社内で起きた好ましい影響
株式会社サンセイ 代表取締役 秋山様(写真:左)
株式会社サンセイ 取締役部長 川口様(写真:右)
ベトナムからの技能実習生を採用して5年目という株式会社サンセイの代表取締役 秋山様と取締役部長 川口様に、採用に至る経緯やご苦労、社内で起きた好ましい影響、インフラサポート協同組合のサポート内容についてお聞きしました。
日本で働く技能実習生
御社での実習内容を教えてください。
弊社は道路資材の販売をしています。アスファルトの材料となる砕石や砂などを販売したり、廃材のリサイクルのための一時保管も行っています。技能実習生には、重機による資材の積み込み作業が伴うオペレーションをやってもらっています。対象職種で言うと「建設機械施工」になります。
トラックに積み込むだけではなく請求書を出さないといけないので、お客さんの名前や車両ナンバー、何を捨て、何を積み込むのかというオーダーを聞いて処理しなければなりません。そこまで全てをやってくれています。
彼らを採用するに至った経緯をお話いただけますか。
建設業界でも既に海外からの技能実習生を採用する動きがありました。個人的な話ですが、6年前にカンボジアを旅行で訪ねたとき、現地の貧困さが強く印象に残りました。ベトナムには日本で働きたい若者が多くいるという話を聞き、同じインドシナの彼らを採用しよう。少しでもお国のお役に立てればという思いがありました。
実際にベトナムを訪ね、応募した若者たちに会いました。彼らと接して最初に感じたのは「日本人に近いな」という印象でした。ベトナム人の国民性は、控えめでシャイ、おとなしいと聞きました。彼らだったら、大丈夫かなと思いました。
インフラサポート協同組合との出会いはその頃からでしょうか。
取引先を通じてインフラサポート協同組合(以下、組合)の存在を知りました。組合が実施している研修や日本語教育の話を伺っていたので、信頼できると思ったのです。
採用から現場教育
採用をする前、どんな不安がありましたか。
日本とベトナムの生活習慣の違いがどの程度のものなのか、私たちには良くわかりませんでしたし、言葉の意思疎通は本当にできるのだろうかという不安はありました。
弊社の仕事は重機を扱うので、事故が起こると大変です。親御さんから彼らを預かっている以上、絶対避けなければなりません。
ところが、日本人とベトナム人では安全意識の違いが相当大きいのです。ベトナムで工事現場に行くと、ヘルメットも被らず、サンダル履きで作業をしている労働者の姿を見ました。この感覚のまま、日本で仕事をさせるわけにはいかない。現場での安全教育の必要を強く感じました。
安全教育の一環としてどんなことをしていますか。
まず安全マニュアルを作成しました。組合のベトナム人通訳の方に翻訳してもらい、彼らに渡して説明しました。
でも、それだけでは十分ではありません。現場の責任者には、彼らに注意するときは「なるべく簡単な言葉で、明確にゆっくり話しなさい」と伝えてあります。「わかりましたか?」と聞くと、彼らは「はい、わかりました」と答えます。でも、本当にどこまで理解しているのか。それを見極める必要があります。「これは危険なことだから、ここを気をつけなさい」。そう懇切丁寧に説明するように言っています。
コロナ対策という観点もあったからですが、弊社のFacebookでは、彼らに対して日々の生活における注意を書いて、ベトナム語に翻訳して読んでもらうようにもしています。
私たちはLINEでもつながっています。彼らに伝えるべきことを全員に同時に知らせるには、SNSは有効です。いまの若いベトナム人は誰もがスマートフォンを持っています。格安SIMを使って、SNSで同胞と情報交換しているんです。お互いの職場の環境の違いなどを話しているようです。
日々の生活など、ケアすべきことはありますか。
弊社には社員寮がなかったので、彼らのために民間アパートを借り上げる必要がありました。ところが、外国人だけの入居は難しかった。そこで組合に相談して、UR(都市機構)を紹介していただきました。
職場では社員が面倒をみてくれますが、家での生活面も誰かがサポートする必要があります。些細なことですが、時どき何かが起こる。月に1度、事業所の責任者が彼らのアパートを訪問し、ゴミの分別ができているか、部屋の掃除など、チェックします。
彼らと付き合う内に、日本とベトナムの常識の違いが段々わかってきました。たとえば、彼らは当初、流しにサラダ油を直接捨てていました。何も悪気があって非常識なことをしているわけではなく、知らないだけなのです。それに気づかないのはむしろ我々日本側の責任だと思うべきです。
生活面でいうと、最初に採用した一期生のときがいちばん大変でした。でも、それ以降、彼らが先輩として後輩に教えてくれるので、手がかからなくなりました。
社内で起きた好ましい影響
彼らの採用に対して当初、社内でどんな反応がありましたか?
採用の話が出たとき、「どうして俺たちが外国人と仕事をしなければならないんだ」という声もありました。社員は彼らがどんな人間なのかわからないので抵抗を感じたのも当然だったかもしれません。
ところが、彼らが来て一緒に働いてもらうと、「彼ら、良いじゃない。」、日本人社員たちは言いました。今ではすっかり彼らを受け入れています。なにしろ彼らの平均年齢は24歳。とにかく若い。一方、現場の日本人は40代後半、彼らにすれば息子の年代なんです。
採用を始めて1年後、社員旅行で実習生と一緒にベトナムに行きました。一緒に働く外国人がどんな国から来たのか知っておく必要があると考えたからです。お互いの理解にとても役立ったと思います。
その後、社内ではどんな変化がありましたか?
日本人と技能実習生との役割分担が明確になって、日本人社員の負担が減ったのではないかと思います。
ベトナム人は根がまじめで努力します。彼らには兵役の経験があり、日本の同じ世代の若者よりよっぽどしっかりしていると感じることもあります。
技能実習生がいると、(自分たちの仕事ぶりを)見られていると感じることから、日本人もそれを意識することで、仕事を見直す良い機会になっています。良い刺激になっているんです。その結果、仕事が改善される場面も見られるようになりました。
国籍が違っても若い人が社内にいると現場は活気づくものです。彼らはお客さんにも評判が良いです。ダンプ運転手とカタコトでも日本語で話そうとするので、ウケが良い。みんなから可愛がられる存在になっているんです。こうしたことは想像もしていなかった効果でした。
彼らのモチベーションをアップさせるためにしていることはありますか?
これは仕方がないことですが、すぐに上達する子とそうでない子がいます。個人差はやっぱりある。例えば、コミュニケーション能力の高い子は、日本語がそれほどできなくてもうまく物事を進めます。
そこで、上達の遅い子の評価を下げることはしませんが、努力して上達の早い子には賞与でいくらか差をつけることにしています。
それから、日本語検定を受けるよう促しています。入社して1年以内に何級を取るか。それによってお祝い金を渡すようにしています。日本語能力は、彼らが帰国した後、必ず役に立つ筈です。
最後に
インフラサポート協同組合がお勧めできる理由を教えてください。
最近、同業他社の人から「どこの組合で彼らを採用したの?」と聞かれることが増えました。
技能実習生を採用する業種は建設業に限らず、農業や製造業など様々です。建設業の会社が実習生を採用するのであれば、インフラサポート協同組合は建設業界を熟知しているので心強いです。
また、ベトナムに研修センターがあり、入社してすぐ実習がはじめられるよう彼らを育ててくれます。弊社のように、積み込み作業を習得する必要がある場合、その実習を集中的に行ってくれます。
入国してからも、組合は必要な研修を一括で実施してくれますし、毎月の定期訪問ではいろいろと相談に乗ってくれます。些細なことでも「こんなことがありました」と話すと、ベトナム語で翻訳して彼らに伝えてくれます。また、技能実習生の採用に関する法令改正など、すぐに先を読んで情報提供くださるのは助かります。
理事の誠実な人柄もそうですが、我々の立場できちんと対応してくださるので、いつも感謝しています。