事例紹介2021.03.01
日本のやり方をきちんと教える
誠和建設工業株式会社 代表取締役 竹本様
大阪府堺市に本社を構える誠和建設工業株式会社では、5年前からベトナム人技能実習生の採用を始めています。今回、3期生の採用からインフラサポート協同組合をご利用下さった経緯や、受入れに対する考え方について、同社の代表取締役 竹本様にお聞きしました。
技能実習生の採用に至るまで
彼らを採用するに至った経緯をお話いただけますか。
日本人が入ってこない状況が数年前からありました。若年者が入社してきても続かない。今の若い子は建設業のような仕事を好まないので、どうしていくかというところで、ベトナム人実習生の採用を考えたという流れがありました。
採用活動はどのようにされていたのでしょうか。
7年程前に現地に見学に行きましたが、アピール内容と現地の内容に乖離がある送出し機関や組合もありました。「日本語能力をN3にします」とパンフレットに書いてあるけども、そんな能力もなかったり。
当時は送出し機関が200社程ありましたが、ランキングもまだできていないような状況でしたので、自分たちで確認をして、きちんとした教育をしている送出し機関を選ばないといけないと思いました。1年かけて80社くらい見ましたね。いろいろ探しているうちに、インフラサポート協同組合にたどり着きました。
採用をする前、どのような不安がありましたか。
実際に一緒に働くのは当社の社員ですので、彼らがどういう反応をするか。また、言葉の壁や生活環境の違いについての不安はありました。
当時は、現地の面接や学校の見学には当社の幹部を連れて行ったんです。実際に見ていく中で「やれそうだな」という感じになりました。不安以上に期待が大きかったですね。
不安よりも期待が大きかったのは何故でしょうか。
彼らに話を聞くと、「お父さんに家を買ってあげたい」とかって言うわけですよ。「弟と妹を学校に行かせてあげたい」とか。最初はそう言ってるだけかなと思っていたんですが、1年以上ベトナムを回っているうちに彼らの素直さに気が付きました。
面接時の彼らの印象はどうでしたか。
非常に良かったですよ。面接の時は10人ほどいましたかね。本音を言うと皆連れて帰ってあげたいと思いましたが、そういうわけにもいかないので。面接用のトレーニングもやっていると思うので、面接だけ見て全部が分かるとは思いませんけど、面接で一生懸命やっているというのはとても大事です。よく教育されているなと思いました。
なんせ教育ですよね。皆現地でも仕事はやっているんですけど、いかに日本のやり方を現地で教えるか。特に建設業は大事だと思います。安全第一ですから。
業種によっては日本語をしっかり勉強するだけでOKなところもあるでしょうが、建設業は安全教育を現地でしっかり教えて頂いているといいですよね。
採用から現場教育
御社での教育について気をつけていることはありますか。
ベトナムの建設業は日本に比べて危険なことが多いじゃないですか、下手したら裸足でやってますから。1年目、見に行った時は驚きましたよ、「これでやってんの?!」って。
全然違う環境で仕事をしていた子達が、急に日本で仕事をするってなったら、そりゃなかなか難しいと思います。最初にきちんと教えておかないと、日本人でも一緒ですけどね。とにかくきちんと日本のやり方を教える。
私たちは咄嗟に出る言葉が関西弁なんですよ。それを教えておかないと、日本語学校で習うのは標準語なので。関西弁で咄嗟に出るフレーズは最初に教えるようにしています。
あと、日本人側はゆっくり喋るようにしていますね。単語で区切って話すと分かってくれたり。それは苦労しましたけど慣れましたね。彼らも徐々に日本語が分かるようになっていきました。
翻訳機も買ったりしてみましたけど、ベトナム語はちゃんと翻訳ができなかったんです。ベトナムにも方言がありますし、声調が6個くらいあるので。なかなか難しいですよ。
当時、一緒にベトナムに行ってた人が「シンチャオ」って言ってたんですが、発音が違うと「こんにちは」が「お粥」になるらしい。半年くらい「お粥」って言ってたんですね。
御社での実習内容を教えてください。
うちにいる実習生はほとんどオペレーターをやっています。だから現場で重機に乗ってますよ。機械の整備・点検もしますし、玉掛け・玉外しもしています。ゼネコンさんの仕事では資格のない仕事はできないので、日本人が重機を降りて指揮者に徹しています。
既に当社にいる実習生は自分で図面を見て、高さを見て掘って、作業も2年目くらいからできています。ベトナム人のチームだけでも作業ができるようになっています。チェックはしてあげないといけないですけどね。
実習生の働きぶりはいかがですか。
社員として扱っているので、年金も健康保険も入っていますし、基本的に給与は日本人とベトナム人で違いはありません。
大概何でもできますよ。最初は勿論、当社の社員がブロックを据えて、運んだり、目地詰めしたりやってましたけど、段々「僕できます」ってなるんですよ。で、実際やらせてみるとできるんですよね。
日本に来るまでにいろんな仕事をやってきてる子が多いんですね。10代から働いている子もいるから。だから建設業を希望してくる子はもう経験があるんですよね。
一番びっくりしたのは、彼らを寮に入れてすぐ、水道の水栓を取り替えたんですよ。水栓の位置が高くて洗濯機に当たるっていうので。だから水栓を買ってきて、僕がやろうとしたら横で止水テープを巻いてるんですよ。「何してんねん」って言ったら、「シスイ」って(笑)。「分かってんねやな」と思いましたね。
あと、左官とかね。たまたま事務所の前のコンクリートを均していたら、こてを持ち始めて。そこらへんの左官屋より上手いんですよ。
ベトナムは手作業が多いので。いまだに壁でも左官ですから。日本人にはない手先の器用さがありますね。若いけど、思っている以上にポテンシャルが高いです。
やっぱり個性もあります。「寮でどんな生活をしているのか」という話になって、料理の得意な子とか、洗濯が得意な子とかってのがあるんですね。だから家事も分担してやってるみたいです。実習生同士で「誰々の飯は不味くて食えない」なんて言ってますね(笑)。
技能実習生の受け入れについて
彼らを採用したことで社内外に影響はありましたか。
社内は若い人が入ってきて活性化しました。1年くらいすると戦力になりますしね。
社外に関しては、まだまだ関西には受入れ企業が少ないので、実習生についての質問を受けることが多くなりました。周りも興味を持ち始めたなと思います。
現状、何か課題はありますか。
実習生が自動車を運転できるといいですよね。彼らを運ぶために車が要るんですよ。ダンプだと3人しか乗れないですから。
うちは6人乗りの車に乗せて行ってますけど、別で車がいるんですよ。車を停められるところがあればいいですけど、道路規制の中ですぐ動かさないといけないとなると、駐車場を探さないといけないとか。大変ですよね。
外国人技能実習制度についてどうお考えですか。
労使ともに環境を整えていかないと、この制度はうまくいかないと思っています。日本人を雇えないから外国の方に来てもらっている。本来、技能実習制度の目的は実習生に日本の技術を教えることが大前提ですから、そこは間違えないようにしています。
実習生の受け入れを考えている企業様へアドバイスをお願いします。
とにかく「外国人ということは忘れる」ということでしょうね。
自分の子供ぐらいの歳の子達を会社に雇うにあたって、どうするべきか考えることは大事かなと。人様の子供を預かっているわけですから。それが一番ですね。
あとは、地方出身者と同じで風習も違うので、お互いに歩み寄らないと上手くいかないと思っています。「うちのルールはこれだ!」ではダメですよね。